大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和22(れ)13 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人大室亮一上告趣意書第一点は原判決は其の判決理由に於て「……Aが抵抗

しようとしたので、Bは木片で同人を殴打し或は靴履の儘で其の腹部を蹴る等の暴

行を加へ」と云ひ、右殴打並に腹部を蹴つたのはBであつて、Cが之に協力したと

云ふ事実は認めていない。却つて右判決理由が更に続けて「更に三名協力してAと

Dの全足を縛つて蒲団を被せ両名の反抗を全く抑圧した上」と云へるに徴すれば、

Cが協力したのは足を縛つて蒲団を被せた行為についてであつて右Bの殴打及腹部

を蹴つたことに協力したのでないことを明かにするものと云はなければならん。然

るに右判決理由が其の後段に於て忽ち「右のような暴行によりAに対し頭部三個所

に治療十数日を要する裂傷及治療約七十日を要する小腸々管破裂の傷害を負はしめ

たものである」と結論し、Cに右傷につき責めありとするは明かに矛盾撞着であり

右判決は其の理由に齟齬があるものであつて、破毀さるべきものと信ず、と云うの

であるが、被告人が他の被告人と共謀して他人に対し財物奪取のため暴行を加へ、

其結果傷害を生ぜしめた以上は共同して其結果について責に任ずべく、原判決は右

の趣旨にそつたもので理由に齟齬ありと言うべきものでない。

同第二点は原判決はCに対し刑法第六十条第二百四十条前段を適用処断した。然

しCが単独で又はBと共同してAに傷害を与へたと云ふ事実に付いては、Cの自白

もなく又他に之を証する証拠もない。却つて原審の第一回公判調書中に記載してあ

る「私は爺さんを殴つたり等して居りませぬがB等が遣つた為に受けたものと思ひ

ます」とのCの供述並に「爺さんが私の持つて居た木片を取り上げ、それをBに向

つて殴つたので、Bも立腹し爺さんから木片を取戻して爺さんを殴つたり蹴つたり

したのであります」とのEの供述に依れば、Fに傷害を与へた者はBであつてCで

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なく、又BがFに与へた傷害に付いてCが共同したものでもないことが明である。

然らば即ち原判決は採証の法則を誤りたる違法あり破毀を免れないものと思料す。

と言うのであるが、既に第一点で説明した通りであるから、原審が刑法第六十条第

二百四十条前段を適用するについて虚無の証拠によつて被告人の責任を認めたもの

とは云へないのである。

同第三点は原判決は其の判決理由に於て証人A同D並に同Gに対する予審訊問調

書を証拠として引用した。然し原判決のあつた昭和二十二年五月二十三日当時に於

ては勿論原審が証拠調をした昭和二十二年五月十六日(原審第一回公判調書参照)

当時に於ても予審は之を行はないことになつて居つた(日本憲法の施行に伴う刑事

訴訟法の応急的措置に関する法律第九条)。従つて斯る予審調書を証拠として引用

するは新憲法の精神に反し前記刑事訴訟法の応急的措置に関する法律に違反する違

法のものと云はなければならぬ。依つて原判決は破毀を免れざるものと信ずと言ふ

のである。仍つて案ずるに原審が証人A同D並に同Gに対する予審訊問調書を証拠

として引用したことは上告趣意書記載の通りである。日本国憲法の施行に伴う刑事

訴訟法の応急的措置に関する法律第九条に予審はこれを行わない旨を規定してある

が其以前既に行はれた予審の訊問調書を証拠とすることが出来ないと云ふのではな

い。すなはち原審の公判調書をみると原審は同法第十二条の意を体して前記三名の

証人を公判期日において訊問する機会を被告人に与へて居るのであるから原審が前

記の予審訊問調書を本件断罪の証拠としたことに些かの違法もないのである。

以上の如く本件上告論旨は総て理由ないことに裁判官全員の意見が一致したので、

刑事訴訟法第四百四十六条により主文の通り判決する。

検察官福尾彌太郎関与

昭和二十二年十一月十一日

最高裁判所第三小法廷

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裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 庄 野 理 一

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

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